映画監督 山崎都世子の日記4:はじめての挑戦

今回の撮影方法として、
『俳優さんたちに情報を伝えず に撮影する』
という手法が用いられ、初めての経験に少し戸惑いました。
ドキュメンタリー風に自然な行動や表情を撮影する、という方法は
何度か使用した事があるのですが、
全編を通して完全に情報を与えないで映画に導いていく
という事は初めてで、
俳優さんの行動や感性によって展開も左右していく撮影方法は
ドキュメンタリーそのものでした。

主演の桃生亜希子さん、こみずとうたさんには
撮影に入る前から奈良に実際に住んで
役柄そのもの、奈良の風土を感じて生活して頂きました。
お二人とは映画の事だけではなく色々なお話をして
沢山の時間を重ねました。
時には相談にのってもらったり、喧嘩もしたりと
共に苦悩も喜びも感じながら作りあげていきました。
現場に入る前から、河瀬さんとは演出法や意見の食い違いで
明け方まで討論することが何度もあり、
私にとって今まで経験した中で
一番特殊で過酷な撮影現場だったかも知れません。
でも、その熱いディスカッションや
俳優さんの根気や努力のおかげで
本当に嘘のない表情や言葉を撮ることができました。