今回の『びおん』の撮影には台本がない。
いや、台本はあるんだ。
きっと。
(あったんだよね?)
ただ、
役者には台本もスケジュールも基本的に情報は与えられない。
現場で指示をもらったり、
指示もなにもなしで突然なにかが起こったり、
なんて言うのかなぁ…
凄く分かりやすく言うと…
『どっきり方式』って言っていいのかな?
だから、
リアルなリアクションになるわけですな。
でもそれが『こみずとうた』のリアクションではいけない。
そのためにミーティング、合宿をした。
ここで意外に感じたのは、
『自分は一応現場の人間、
(これは撮影だ)と心で思ってしまうのでは?
客観的に、冷静に物事を見てしまうのでは?』
という懸念があった。
だがそれは取り越し苦労だった。
相当な単純野郎なのか、
合宿の賜物なのか、
その両方なのか、
きっとその両方なんだろう。
いや、単純野郎の比率の方が高…k愛
オレって、意外とすんなり『どっきり』に引っかかるのね。
だが『どっきり』だけではない。
場合によってはテイクを重ねることもある。
そうすると、反応は新鮮ではなくなってくる。
常に気持ちを保たなければいけない。
最初の感じを忘れないように、
でも、ダメだった部分を補修・改善してもう一度臨む。
これはとても難しかった。
そして今回の撮影は『順撮り』で行われた。
ストーリーの時系列に沿って、
台本通りの順番で撮っていくというもの。
今日の楽しいシーンの直後に、
数日後の楽しくないシーンを撮ったりはしないわけです。
このため、日々起こる(撮る)出来事を、
まるで自分の体験のように感じることができ、
自分の記憶として刻まれ、それがその後に繋がっていく。
志保(桃生亜希子さん)が一人の時に何をしているかなんて知らない。
翌日起こることは知らない。
知り得ない。
それは普通の生活と同じ。
それに助けられた。
この方式のお陰で、この物語の時間の中を生きることができたと思う。
あとはやはり、
薪割り、
木工、
田原の家での生活、
これらを合宿から、
クランクイン後も続けられた、
続けさせてもらえたので、
最初はヘナチョコだった薪割りも上手くなり、
実際に機械を使った木工作業も自分ででき、
家の中での自分の動線なども構築することができた。
とても贅沢な環境を与えてもらえたんだと思う。
そうして撮影は進み、
いろいろな体験を経て、いろいろな感情を抱き、
誠人の普段の生活を送り、
積み重なり、絡み合い…
そして撮影は終わった。