奈良で生まれ、奈良で育ち、この町で生きることを喜びとして、今日まで来ました。
映画制作は、そんなわたしの人生を豊かにしてくれた表現のひとつです。
漠然としてつかみどころのない人生に、芸術という喜びがもたらされ、過去へも未来へも自在にその発想を転換できるこの映画芸術に出会えたとき、心の奥のほうにあるものが、熱を帯び、魂の揺さぶられる想いがしました。
子供たちにも、この喜びを伝えたい。
奈良の伝統や文化の継承と芸術の融合がもたらすもの。
それは世代を超えて生きる喜びとなり多くの人とわかちあえることでしょう。
この先の10年20年、もっと言えば100年、千年を視野に入れてものごとをひとつひとつ組み立てることが、実りある豊かな未来を創造してゆくことにつながると信じています。
この国は美しく、人々はやさしい。
なら国際映画祭が、あらゆる芸術の祭典として将来成長してゆけますように。
映画作家 河瀨 直美